Stage 4 [思い出]
そして、なんだかんだ言っても女性だと言う安心感と同時に、こういうイベントなどで知り合って連絡先を交換してもきっと連絡はしてこないだろうと、そして2度と会う事はないだろうと思っていたからだ。
次の日、何故か彼女は自分からメールをした。
相手は「永遠(とわ)」と名乗ったベリーショートの男っぽい彼女?。
「この前はどうも・・・」
なんてからのお約束の後日ご挨拶メール。
もう会う事もないんだからと思って「また機会があったら遊びましょう」
「機会なんて待っていても来ない。機会は作るもんだよ。」
そう返信されてきた。
その一言でこの1通のメールは以外にも長く続いた。
思えば前日のイベントには相手(彼女?)を探しに来ていた人も多かったはず。
『永遠(とわ)』はなんとかまた会う機会をと必死だった。
今、彼女と『永遠』を繋げているのはこのメール。
これを逃すと彼女にはもう会えないかも。
その思いがこの1通のメールを長く続かせたのだろう。
だが、以外にも『永遠』にはまだ恋愛という感情を彼女には持っていなかった。
が、それが変わるのも総時間はかからなかった。
後日・・・どれくらい日にちが経ってからだろう。
その後は連絡を取っていなかったのだが、携帯を変えたからとメルアドと番号を記したメールが彼女の元に届いた。
『永遠』は入院をしていた。
彼女は、「今度お見舞いに行くね」とメールを返した。
その当日、彼女は以前から欲しかった一眼レフカメラ(アナログ)が届いたと注文していた大型電気店からの連絡が入り、カメラを取りに出かけた。
待ちに待った一眼レフを手に彼女はちょっとしたいたずら心が湧いた。
「連絡してないけど、お見舞いに行ってみよ。」
どこの病院かは前もって聞いていた。
彼女は荷物を手にタクシーに乗り込んだ。
Stage 3 [思い出]
「ちえ」と名乗った女性は1人出来ていたらしが、先ほど声をかけてくれたサイトで知り合った女性とも知り合いだったらしい。
彼女がホールの人ごみに消えていくのを眺めながら、タバコに火をつける。
まだ隣に残って座っている「永遠(とわ)」と名乗った女性が話しかけてきた。
薄暗くクラブミュージックのガンガン流れる中で、人ごみを眺めながらただ機械的に彼女の質問に答えていた。
「永遠」は身長はそれほど高くなく155~6cmくらいで小柄。
ヘアスタイルはショート。
声が低めで女性の割には体つきがしっかりして見えたのは、学生時代にソフトボールをやっていたせいだけではなく、ホルモン注射をしていたからだとわかるまではそう時間はかからなかった。
永遠との会話はそんなに珍しくもなく、いたって誰でもまずは話す内容だった。
誰ときたのか? 1人で来たのか?
パーティーは初めてなのか?
どこで知ったのか? etc
大体の会話に終わりが見え始めると彼女は帰る事を永遠に告げた。
「そろそろ、私帰りますね。」
「帰るの?」
「うん、ちょっと疲れたしね。それじゃ、またいつかの機会に。」
彼女が席を立ってロッカーに預けてあるカバンを取り出しているところに永遠がやってきた。
「この後、予定とかあるの?」
彼女は帰るだけだというと、あと友達2人と3人で来てるからカラオケでも行かないかという事だった。
その時、彼女は断らなかったのだろう。
その誘いを受けて4人でカラオケボックスに向かった。
カラオケボックスで彼女は1人で少し離れたところに座り、自分では数曲しか歌わず後は3人の歌を聞いているだけだったが、その時間は彼女なりに楽しんでいたようだった。
カラオケルームのインターホンが鳴り終わりの時間を告げる。
4人はエントランスでそれぞれ携帯の番号やアドレスを交換した。
あっさりと教えることが出来たのは、ビアンやFTM(フィメイル to メイル)といっても女性だという安心感からだろう。
Stage 2 [思い出]
会場はスタンディング形式だったため幾つかの背の高いテーブルと
壁際に5~6人ぐらい座れる長いソファーが置いてある
彼女はとりあえず携帯だけ取り出しバックをロッカーに放り込み
アルコールの入ったグラスを手に暫くその雑踏を眺めていた
暫くすると雑踏を掻き分けて1人の女性が近づいてくる
その女性はサイトで知り合った中の1人で友達数人と来ているから来ないかと
誘ってくれたのだが、後で行くとその場は断った
再び雑踏の中を眺めているとソファーに誰も座っていないのが目に入った
彼女はソファーに腰掛けグラスのアルコールに口を付けた
「私にこの場はちょっと合わないかも・・・」
ここを出てどこかで飲みなおそうかと考え始めたところに
そばでボーイッシュな女性が叫んだ
「携帯落としたかも!! ここら辺に落ちてない??」
周りにいた数人は一斉に床や添わっているソファの周りを探し始めた
が、ここには無いようだった
「ここらへんで落としたの? 他にどこかおもいあたるとこない?」
彼女が声をかけた
他の女性たちも
「届いてないかスタッフに聞いてみたら?」
と、声をかける
「あっ! うん、聞いてみる」
ボーイッシュな彼女は携帯を探しに雑踏の中に消えていった
ほんの1~2分でその女性は自分の携帯を手に戻ってきた
どうやらトイレに忘れたのがスタッフのところに届いていたらしい
彼女や一緒に探してくれた女性にお礼を言って
その女性は彼女の隣に座った
彼女とその女性、そしてその女性を挟んで向こう側のさらにボーイッシュな女性と3人で少し話をした
携帯の女性はちえと名乗った
その向こう側のさらにボーイッシュな女性は永遠(とわ)と自己紹介をした
Stage 1 [思い出]
当時仕事の転勤で栃木県にいた
県庁所在地ではあるがあまりにも何も無い土地だった
それが彼女の感想
友達といえるような友達付き合いも無く1人で気晴らしにいける様な所もない田舎町
必然的に彼女は引きこもりになっていった
当時の彼女の友達は『TV』と『パソコン』
そんな生活だった
それでも全くの1人は寂しい
とりあえず女友達・・・と思ってメルトモ探し
興味もあったのかメルトも探しに選んだのはセクシャルマイノリティ(いわゆるビアン)サイトだった
とにもかくにもココなら女の子しかいないし
何より変な男からの書き込みや誘いがないから安心だと思ったのだ
そこでは数人のメルトモが出来た
みんな普通の人
普通の会話
少しもセクシャルマイノリティな感じは無かった
■
数ヵ月後
彼女は会社を辞めて地元札幌に戻ることにした
ネットや電話での物件探し
一時友達に物件探しを頼んだら敷金や礼金を持ち逃げされるというアクシデントもあったが
何とかその両親とも連絡が取れお金は全額返してもらうことが出来た
部屋も決まり引越し準備
何故にこんなに荷物が多いのかと自分自身でも不思議に思った
もうこんな事は無いだろうと札幌まで車で移動
案外楽しい長距離ドライブだった
さすがに津軽海峡は車では渡れないのでフェリーに乗船
はじめは台風が近づいているため出航しないかと思ったが約2時間遅れで出航した
引越し作業が朝8:00から始まって約3時間くらい
青森に着いたのは夜10:00くらいだったと思う
その時間には既にフェリーは無かったので車で仮眠することにした
朝1便のフェリーの手続きを済ませ出航したのは何時だっただろう
甲板に出た時に見えた朝焼けが綺麗だった
■
フェリーが着いたのは室蘭港
まだ朝が来て間もない
フェリーでは眠れず運転しどうしの疲れもあってか眠たかったので少し眠ることにした
昼頃には札幌に着き不動産屋に行ってカギをもらう
部屋に着いたはいいが何も準備が出来ていない
まずはガス会社に電話して開栓してもらう
電気と水道はセルフサービス
荷物は1日置かないと着かないので何も無い部屋で買ってきた弁当を食べてひざ掛けと毛布に包まって寝た
おかげで次の日は体中が痛い
■
やっと待望の荷物が届いた
これで寝床は確保される
ダンボール50個以上
部屋中がダンボールで埋め尽くされた
片付けるのが大変だ
引越しの荷物を綺麗に片付けるのにしばらくかかった
やっとネットの開通
ビアンの娘からのメールも来ていた
ビアンのパーティーがあるという
彼女は興味もあったので行ってみることにした
ススキノ(北海道で1番といわれている歓楽街)の端のほうにあるビルの1階
大き目のホールが会場だった
中は薄暗い照明と大音量のクラブミュージックと大勢の女性でごった返していた